地拵(じごしらえ)という仕事

山林部造林班は、7月以来の「地拵」を再開しています。

DSC_2979.JPG

「地拵(じごしらえ)」という仕事は、森づくりの第一歩。
苗を植えるためのスペースを空ける仕事になります。

この現場は、「伐造一貫(ばつぞういっかん)」という仕事を、下請けでさせて頂いている現場。
皆伐から地拵までの仕事になります。


森づくりの第一歩ですが、実に地味な仕事です。
機械化が進んできた林業ですが、一番遅れているのが造林作業の機械化ではないでしょうか?
造林作業の中でも肉体的に一番厳しい下刈りは、下刈鎌→刈払機と機械化が一応図られていることを考えると、最後の砦は地拵でしょうか。
そのため、ほぼ全てが人力作業となります。
地味な上に人力。


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さて、地拵仕事をしていたところ、山菜取りをしていた老夫婦が通りがかりました。
険しい顔をして地拵をしているA君に声を掛けました。
「何をしてるのですか?」

「何って、見ればわかるでしょ?地拵。この暑い中、朝から晩まで枝やら灌木を鎌で寄せるのさ。腰は痛いし、手は痛いし、暑いしで、良い事なんてひとつもない。もっと楽で金になる仕事してる奴らは沢山いるってのにさ」

老夫婦は「ご苦労様・・・」と言って、その場を去りました。

少し歩くと、一生懸命に地拵をしているB君に出会いました。
先程のA君のように辛そうじゃありません。
老夫婦は尋ねます。
「何をしているのですか?」

「地拵という仕事をしています。大変ですけど、私に与えられた仕事を一生懸命やっています。この仕事で家族を養わなければならないので、文句なんて言ってたら罰が当たりますよ。」

老夫婦は「頑張ってくださいね」と言って、その場を去りました。

また、もう少し歩くと活き活きと地拵をしているC君に出会いました。
老夫婦は興味深く尋ねます。
「ここで何をしているのですか?」

「私達はここに、100年後の豊かな森林を作っています」

「大変ですね」老夫婦は労りの言葉をかけました。

「そうですね、確かに肉体的には大変です。けれど、ここが100年後に豊かな森になると想像してみてください。ほら、いまは裸地のこの山に一本一本苗を植えて、下刈りやら除伐やら手を掛けてあげて、50年後ぐらいには間伐で収穫が出来るかもしれない。100年後だけじゃなくて、200年、300年後にも森の恵みを人々に届けるかもしれない。そんな豊かな森づくりの第一歩に携わっていると思うとワクワクしませんか?人力で大変そうに見えますが、工夫次第では、ほらこの通り。こうやって仲間と力を合わせて一つの現場をやり遂げるというのも、達成感有りますしね!」

老夫婦はC君にお礼を言って、山菜採りに戻っていきました。


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ちょっと逸脱してしまいましたが、イソップの「3人のレンガ職人」風に書いてみました。


確かに大変な仕事です。
その中に何を見出すか?というのが、とても大切なんじゃないかと思いますし、やもすると忘れがちな部分なのではと思います。


実際の仕事を紹介しましょう。
冒頭の写真の、これから地拵を行う手前側を薄黄色で塗ってみました。
奥側が地拵が終わったところになります。
DSC_2979 - コピー.JPG

等高線上に縞になっているのが分かると思います。
3m以上の間隔を空けて、筋置きの幅は2m以内。という仕様に基づいています。
なるべく広く開けたいところですが、開けすぎも大変なので最低限の仕様が決まっているわけですね。


手前は、枝や笹が縦横無尽に落ちています。

この場所は、カラマツの65年生の皆伐地でした。
カラマツに付いて回るのが、「クマザサ」。

現場に入る直前、クマザサは人の背丈以上に伸びていました。
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見通すことが出来ないので、作業路の線形すら掴めない。
笹刈が最初の仕事でした。


弊社の林業部門(山林部)は、形式的には「素材生産班」と「造林班」に分かれています。各自の得手不得手を鑑みて班編成を考えます。
その時々の仕事のボリュームだったり、進捗だったりも考慮して班編成を決めています。
その辺りの事は、一昨年ブログに書いていました「伐造一貫の植栽が始まっています




きつい仕事にも、時にはご褒美があります。
「2、3日遅かったかな~?」と、先輩Iさんが見つけてくれた「ハナビラダケ」

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こういう楽しみも、時には必要です。

背景には、筋置きが綺麗に見えますね。


山沿いを走っていると、斜面に筋を見る事があると思います。
そんな時は「あぁ、これが地拵か」と思い出して頂けたら幸いです。


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