「え、含水率計で測って終わりでしょ?」と思われた方が多い事でしょう。
《正しく理解して正しく使えば》という前提があります。
弊社ではこちら、kettのmoco2 「HM-520」を使用しています。
高周波方式となります。
樹種(比重)・厚み等を機器に設定して、端子を木材に軽く押し当てると手軽に含水率が表示されるという優れもの。
しかし、あくまでも「推定値」なのですね。ここが注意しなければならない点。
正しく理解して使わないといけません。
弊社では含水率測定の研修を修了した者がおります。

さて、わざわざ水分計を用いる事を記事にしたいわけじゃありません。
とある方(Mさんとしておきます)から、
「ヒノキの荒材で、乾燥状態が含水率10%以下(理想としては7~9%)。30㎜角を取れる材を探しています」
「以前ブログで紹介されていたような余剰材でも結構です」
との連絡を頂いたのでした。
以前納品させて頂いた材料の乾燥状態について、Mさんは高い評価をして下さっておりました。今回は別案件でお話を頂いた次第。
さて、頭を悩ませるのは「含水率10%以下」という部分。
弊社では、乾燥室から出た時点で12~13%を目指し、その後の養生で平衡含水率に近づいて15%程度になることを想定した乾燥を行っています。(接着が前提なので、これ以上高い含水はNGです)
求められている含水率は、それよりも更に低いもの。
「よく乾いている材があるかもしれないし、いっちょ、計ってみるか」と水分計を手に持って気付きました。
端子間が4cm無いのです。使って貰おうと思っていた余剰材が大凡40㎜角・・・・。測れない。。。
「時が止まりました」(←大袈裟)
次に頭に浮かんだのが【全乾法】
つまるところ「破壊試験」
試験片から完全に水分を抜き、その前後での重量比を比べればよい。ということになります。
全乾重量としては、「105℃に設定した恒温器に試験片を入れ、重量変化が無くなったときの重量を測る」とあるのですが、弊社には恒温器がありません。
ということで、電子レンジを使いました。なので、「簡易全乾法」と呼ぶことにしました。
再生できない場合、ダウンロードは🎥こちら
500Wの設定で、木片が焦げないギリギリの時間を様子を見ながら何度もチンしました。
さながら、桧の料理をしているよう。

レンジを開けると、桧の良い香りがしてくることがありました。
重量は、0.1g単位で計測できる秤を使います。
試験片としては、余剰材の山から2本抜き出し、両端から40cm以上入った部分と中央付近からの3片×2の計6ピースを使って試験を行いました。
結果をグラフにすると、この様になりました。

11、12付近で一度重量が増えている個所があります。
一晩、室内に放置しておきました。その晩、雨が降り湿度が上がったのですが、見事に水分を吸収したことが分かりました。
27以降は、ほぼ重量変化がなくなりましたので、試験終了としました。
下の2片は、途中で追加したもの。
最初の6片はちょっと分厚かったかな?と思い、薄い試験片も試してみようと追加したのでした。(グラフに記載はありません)
結果としては、10~13%程の含水率であることが分かりました。
弊社の造作材基準としては、十分に乾いている状況でしたが、今回のMさんからの要求に対しては少し届かない結果でしたので、ありのままをお伝えしたところ、感謝を伝えられまして「この部材で検討します」とお返事を頂くことが出来ました。
あ、まだ正式発注じゃないのですが。
ちなみに、全乾比重は、
試験片1:0.40
試験片2:0.37
でした。
実は、前理事長である美谷添清和が、私が入社するずっと以前に試験をしたことがあると聞いたことがあったのです。
乾燥に関して知見を深めるためだったのでしょう。
奇しくもこの様な実験をする機会を頂けたことに、ありがたい気持ちになりました。
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